ひとつ めぐる
木立 悟
陽はひらき
もの皆きしみ
葉を迷い
土へ降る色
曇をせばめる音は冷え
路はひととき白くなる
風に生まれる幼いまだら
水たまりの空のはじまり
ゆがみを抱いた黄色でいる
やわらかく双つの黄色でいる
いきどまりの手の黄色でいる
中庭をめぐる ひとつの背を描く
痛む肩へと振り向くと
風は渦をまくことなく
小さく上下をくりかえしている
午後が来ても 夜が来ても
忘れられた雨は泣き
川がさらに夜を呑むとき
暗く冷たく 見放さぬ手が
雨の素足と頬を洗う
去る色たちは朝へ去り
残る音は灯下に変わる
歩き出せば遠い中庭
東から来る風にまたたく