ひかりの落ちるひかりの中で
はらだまさる

許さないで下さい
机の上に転がる
果実に写った柔らかさを
ひかりの落ちる
ひかりの中で

願わないで下さい
薄く濡れたままの便箋や
握りやすい万年筆に
触れようとする
その小さな手の平で

愛さないで下さい
背中に寄り添う
二つに別れた直線が
ゆっくり凝縮して
ぱんっと弾ける刺激で

舌で触る
数々の出来事、
意味を為さない残酷さと
地上で最も磨り減った
書体を

海のように
透きとおった影が
はにかんだ紙の
裏側で静かに
滲んでいる

割れた場所から
塩味の色彩と
どうしようもない
優しさが
溢れてしまう

微笑みは
いつだって
思いがけない
匂いと共に
静寂を消してゆくから

許さないで下さい
机の上に転がる
果実に写った柔らかさを
ひかりの落ちる
ひかりの中で





自由詩 ひかりの落ちるひかりの中で Copyright はらだまさる 2006-11-01 10:52:23
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