ひとり 海へ
木立 悟




かわいた中洲は
鳥に埋もれ
流れはただ
飛沫の跡を運んでいる


望まれぬものが橋をすぎ
影は明るくひろくなり
音や色に梳かれては落ち
にじむように流れを濃くする


消えた原の声は低い
時おり近くをすぎるときだけ
かつてのかたちを届けにくる
常に月をともなうかたち


橋から橋へ 波ばかりを
唸り声は追っている
雨に生まれる星に照らされ
唸り声は増してゆく


雷のあと
歩むものは重なり
流れは早く
雨を越える


あるものはなく
ないものがある
指をすりぬける問いたちが
道に浮く道 沈む道をゆく


土と眠り 小さな煙
陽に挟まれた銀の繰り言
望まれぬものたちの羽と応え
舟の上のひとりにつもる














自由詩 ひとり 海へ Copyright 木立 悟 2006-10-30 15:44:29
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