ひとりでくらす
ミゼット

猫を飼えない代わりに、木の苗を買ってきた。

シンクの上に置きたかったから、鉢は百均の小さなのにした。

猫を飼えない代わりに、水をやって日に当てて、肥料をやってあれこれ構う。

  あたしは至極薄っぺらいものが好きなんだ。

  本で見たような、写真に出てくるような、薄っぺらい綺麗な生活。

  お手本どおりの完璧がなけりゃいけない。

苗は育って葉も増えて、落葉したら、また葉が増える。

繰り返しの安寧、円環の幸福。

ああでも飽きてきた。

  あたしはとにかく無い物ねだりが好きなんだ。

  積み上げたらぶっこわして、完璧などっちかを探し続ける。

  鉢が小さすぎてその先はどうせないよ。

それからあんまり部屋に帰らなくて、自分の世話しかしなかった。




捨てられた日に戻ってみたら、
私の猫は干からびて死んでいた。


自由詩 ひとりでくらす Copyright ミゼット 2006-10-29 22:08:29
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