糸桜
ルーファウス=フレデリカ

十六夜の月は浅葱染まり 色恋の欠片埋める
薄明かり 髻華うず似た簪を照らし微笑む郎女いらつめ

夜光の蛍 箱に押し込め 籠の鳥の嗤う

淫佚いんいつな浮き寝 鳴き菖蒲 妹の艶咽えんえつ 影に消える
机に広がる艶書の意味す言 桜花の渦とともに

細鳴く秋蝉 映す水弾ね散る糸桜奏で融けながら


絆を結ぶ淡海如く 稚き手暗涙流る間
慰撫す光 暖かき身体の艶然たる髪

おう弱な細き身抱く刻 月は皆既啄ばみ果てる

風射す寝台に軟風 幾度入れど止まぬ紅玉の頬
涙濡つ瞳 抱き囁き請う はらむ胡蝶の暁闇捨て乍ら


川明かり 集まる千鳥は舞う 可憐な肌を包むが如く
感涙こぼす小夜着遊女 兄の手を取り遊里へ消えゆ

彩る灯り 苦味流す現世身 白肌を焦がし紅涙

杯交わし三千世界の鴉を殺し永遠に寝たい
咲きし比翼の芽は育つ 細め上枝に灯る雛罌粟

眠る雛鳥の下 注ぐ愛 契りより強い証


淫佚な浮き寝 鳴き菖蒲 妹の艶咽 影に消える
机に広がる艶書の意味す言 桜花の渦とともに

細鳴く秋蝉 映す水弾ね散る糸桜奏で融けながら


自由詩 糸桜 Copyright ルーファウス=フレデリカ 2006-10-29 19:45:20
notebook Home 戻る  過去 未来