流星を刺しゅうして
たちばなまこと

夜明け前 ぼくらの宇宙(そら)では
屋根ではじけた流星が うるおいの濃紺に飛び散るんだ
プレアデスの向こう 溢れ出てくる流星を
君の瞳に刺しゅうして
対になった星の光が ちかちか燃えるのを見ていた

夏に出逢えなかったぼくらの
引き出しにしまった線香花火
お母さんには内緒で ベランダから抜け出して
濡れた紅葉の絨毯を抜けて
ふるさとの宇宙(そら)に 放しにゆくんだ

とても早起きの近所のおばさんは
遠い街へ茜色のお水を届けてきたところらしい
君の瞳の流星を のぞきながら微笑んで
若くてうらやましいって
何度も何度も言うんだ
若かった頃の気持ちを 忘れてしまったみたいに

君と手をつないでぼくらは駆けて
ぼおっ と
紅葉を照らす流星を バケツ一杯拾って帰る
ちかちか
窓を外したベランダ 星が観覧車を描く宇宙(そら)
ちかちか
秋の虫の四分音符が もぐりこんだおふとんで
川の字で手をつないだら州の字だね なんて笑って
新しい朝まで眠るんだ




自由詩 流星を刺しゅうして Copyright たちばなまこと 2006-10-29 09:55:54
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