群生
霜天

覚えているでしょうか
始まりはとても深い海の底
それよりも少しだけ明るい窓辺の椅子
の上に、小さい体を完璧な球体に近づけようとして
息を止めていた、午後の

そこでは、君と出会った


手を繋ぐ、という意味を知ったのは
それよりも
ずっと
ずっと
昔のこと
重なり合う意味は深く、深く
沈殿した川底は風もなく、揺れない

忘れることは、ここに許された数少ない、ひとつの


夜になると
とどめられなかった景色を見る
通り過ぎる風を
受け止める深さがない
指の隙間から零れていく水を
受け止める器もない
閉めた扉をもう一度開いて
螺旋の階段をゆっくりと、下りていく


押しとどめるには弱く
開いた蓋からは落ちていくしかない
手を繋ぐその意味の深さを
瞬きの隙間に置き忘れて
あの日からの道の行方は
覚えていけるものであれば


群れのための
盾はない
続けていくための
道でもない

ずっと
ずっと
昔のこと
そこでは君と出会った


自由詩 群生 Copyright 霜天 2006-10-29 01:38:09
notebook Home 戻る  過去 未来