存在と現象
狸亭


ぼんやり 新聞コラム 眺めてたら
女は 存在 男は 現象
つまり 全ての基本は女 だから
はじめに女ありき との文章

これはもう 現代常識である
聖書の記述は 間違えたのだ
好きになった女は みな 骨である
もともと ぼくの肋骨だったのだ

そう信じて 辻褄合っていたのを
いまさら ぼくは現象だったのか
宙返り あの 大江健三郎
話題の新作の動機と 同じか

現象が存在を求めるなど
ありはしない ぼくという現象が
長年ふりまわされてた エルドラド
みなみな 宙返りして 消える 自我

まずは其処に 厳として存在する
あなたたち女がいて 延ばされた手
やわらかい触手が 誘惑する
男らの精子が 卵子をめざして

突進するのだ と 教わったものだ
それがなんと 現代先端科学
によれば 卵子の繊毛が その婀娜
めいた魔力で 誘い寄せ もがく

精子掴まえるらしい 目から鱗
この歳になって はっきりとわかった
ぼくという現象の 女回顧
いつもいつも惚れてた のではなかった

惚れさせられていたのだった 存在
ああなんという 重いたしかな言葉
存在と時間 存在と無 太宰
治の カチカチ山の あの 修羅場

惚れたが悪いか たぬきは現象
うさぎは存在 だから 惚れたが負け
遥か彼方から 聴こえる 哄笑
まさに宇宙の果てから ヨイトマケ

無間空間に漂う 頼り無さ
せめて あたらしい存在の不思議を
ふるい現象にのせた 浮世笠
かかげて 楽しんでいるしかないのう。

19990722 



自由詩 存在と現象 Copyright 狸亭 2004-03-20 16:00:28
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