悲愛
茉莉香

茶色の髪がふわりと浮いた
振り返った貴方を私はみつめた
手を止めると言葉なくして
私と貴方は見つめ合った

余裕なんてなかった

ただこの時をゆっくりと噛締めて

やがてくる別れの予感を打ち消して

私と貴方は見つめ合った

心臓がとくりと動いたとき
時はまたいつものように動き出し
私達は微笑み合い
交差する言葉を巧みに操作して
叶う事のない二人の夢を紡ぎ出し
やがてほどき無に還す

それでも あの瞳は私の心を射ったまま
脳裏に焼きつき涙が頬を伝う

幸せだったのだと私はつぶやき
瞳を閉じる








自由詩 悲愛 Copyright 茉莉香 2006-10-28 22:27:10
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