泣くなマリンちゃん
しゃしゃり

マリンちゃんの話
きいてほしい


マリンちゃんはジョニーの腹違いのいもうとで
ジョニーとは似ても似つかないほどの美少女だ
めったに笑わないとゆうか
笑った顔を見たことがない
でも笑ったら
ぜったい泣く子も笑いだすほど可愛いと思う


くわしい話を省略すると
マリンちゃんはジョニーをだまして
まんまと三十万円をせしめた
でもそんな大金をなんに使うのか
俺も聞かなかったし
マリンちゃんは整形するんだって言ったけれど
半年たってももとのまま
そりゃそうだ、だってマリンちゃんは
そのままでまるでアイドルのように可愛い


俺はマリンちゃんにとってはもちろんただの他人だけれど
ジョニーに頼まれてお兄ちゃんになりすました
だけど
マリンちゃんは最初ッからわかってた
俺が偽者だってことも


マリンちゃん
俺は惚れたかもしれない
でもジョニーのいもうとに
何をするわけにもいかない


マリンちゃんのカレシは
つまりヤクザな男だった
マリンちゃんはもらったお金をそのまま貢いでいたわけだった
どうしようもない馬鹿男なのに
なぜかマリンちゃんはそいつに夢中だった
ジョニーが知ったらどんなに哀しむだろう


マリンちゃんと俺は
いちど遊園地でデートした
なんでそうゆうことになったのかは
俺にもよくわからない
喫茶店で会って
お兄ちゃんは元気?てきかれ
ああ元気だよと答えた


観覧車にのって
とおくの街をながめてみた
マリンちゃんの横顔はかなしいほどきれいだった
てっぺんのあたりで
マリンちゃんの頬に涙がつたった
なぜ泣くのさマリンちゃん
どうしてそんな男が好きなのさ
泣くなマリンちゃん
ジョニーが泣くぜ


ポケットにつっこんだ俺の手に
にぎりしめたお守りひとつ
ジョニーに渡してくれと頼まれた
でもなんでかそれは「安産」のお守りで
マリンちゃんも喜びようがないので
ふたりで神社へいって
おみくじをひいた


俺は小吉
マリンちゃんは中吉だった
別れろよ、と大きなお世話で俺は言った
マリンちゃんは何も言わなかった
でもそれから
マリンちゃんの高校の革かばんには
ちゃんと「安産」のお守りがぶらさがっていた













自由詩 泣くなマリンちゃん Copyright しゃしゃり 2006-10-26 21:50:02
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