ひたり火
キメラ



まるで偏執な物体が希少に向かいあい
執拗に岸辺を凌駕しきれないでいる
“失う”とは時になんと甘美な転生なのだろう
在るべき場所にモノが無くなる便宜上の不備
モノローグの反響が外界の冷旋に浚われたような失念
肌で覚えたシンパシーから
その琥珀を埋め尽くす 風光の彩よ

凍りついた警醒と溜め息は
心の触れあいからのみ賜る 柔らかき球体枠に
いつしか枯れた吐息を吹きかえし
物憂げな窓辺 焦点を失った終焉の唖響

“とうめいが触れてくるのが解るか?”

銀河軌道の亡き半世紀を媒介し 乱れとぶ蒼羅漢
慈愛のヴェール 妖艶は地平の尺度に犯され
のち刹那に狂絶したままの幻暈の汽笛が
かすめに絶叫している


様々に流れだした 宵のひたり火
かえれない祭囃子
永劫を纏い
世界の側線から
いま


いちじるしきおもかげに砕けよ







自由詩 ひたり火 Copyright キメラ 2006-10-26 20:38:11
notebook Home 戻る