生まれ 生まれて
木立 悟




避けられ 切りとられた夜を
小さな熱の泡が昇る
風のなかの水の群れ
崩さないちからへ向かう群れ


壁の傷は洞のように
しずくのこだまのようにつらなり
やがてしたたるそのままになり
知らない言葉をつぶやいている


まぶたをすぎる指の影から
誰かの指の影を引いても
決して自分の数にはならず
光は光でなくなったあとも
影をつくりつづけている


ひとつの海から
たくさんの海
愛されぬものたち
生まれ 生まれて
血を手わたすうちに雨が来る


土の羽に消えるうた
あふれあふれ こぼれる指先
満ちるまもなく流れ去る
影を見ない影の群れ


透きとおる家に窓はなく
屋根は視線にざわめいて
ひとつの夜から分かれゆく夜
しずくの歴史の国を見つめる


流れるものにつくられる指
終わりなくわたしつづけるしたたりの
すくわれるものこぼれおちるもの見つめあう双子
互いの色に触れながら
互いの色に生まれ微笑む















自由詩 生まれ 生まれて Copyright 木立 悟 2006-10-25 22:28:27
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