迷宮廻り
whipporwill

ここから始めようか?
無限に続く悪意と、絶えない善意で彩られた我等の庭。
いつだってここが原点で終点だ。
この閉じた園は、決して開かれない。
君達と初めて出会ったのはこの場所だし、君達と別れたのもこの地だったね。
そして、再会するのもきっとこの箱の中だろうね。

この揺り籠の居心地はとても快適で、たまらなく不愉快。
全てのものがこの方舟には用意されているから、なに一つ不満なんてありません。
富も貧困も、幸せも不幸せも、友も敵も、生も死も、愛だって勿論。
引き篭もりの部屋には十分過ぎる程の財さ。
だからこそ悩む。
何を使えばいいのか?
何を捨てればいいのか?
何を求めればいいのか?
全身に飾り付けても、まだまだ持ちきれない。
封鎖された無限の領域を散歩するには。どれだけ備えても不安だ。
そこらに転がる最高峰を目指すお気軽な散歩とは訳が違う。
世界には終わりがないのに、俺達の持ち物には限界がある。
なんて矛盾だろうか。
悩んでも、悔やんでも、ましてや怒りだしたってどうにもならない。
だから覚悟した。
諦める覚悟、捨て去る覚悟、奪い取る覚悟、略奪される覚悟。
道標もなしに歩き出す決意に他ならない。
誰も彼もが自動的に行う自然の摂理。

さあ、歩き出そう。
刹那だって待ってはいられない。
空はどこまでも続いているけれど、糧は有限。
最後に残る死を食べ尽くしたら、そこで終了。
他の誰かよりも遠くへ。
雑多な玩具箱の中を無節操に駆け回れ。
歩け、走れ、休めば取り残される。
兵糧が尽きるまで無駄に生き急げ。
最後には何も残りはしないし、誰も讃えもしない。

餌が尽きて息も絶え絶え、それが終着。
はてさて、それではそろそろ。
ここで終わろうか?


自由詩 迷宮廻り Copyright whipporwill 2006-10-24 23:20:34
notebook Home 戻る