砂丘で蛍を見たあいつ
たりぽん(大理 奔)
紅葉が近づく
樗谿
(
おうちだに
)
は
とうめいなたくさんの蛍が
言葉だけつまった
名前だけの思い出を
夕暮れにかえそうとする
いろだけになってしまう
ぬくもりを失うと
とうめいになってしまう
飛沫が砂を孕む砂丘は
とうめいなたくさんの葡萄が
音楽だけつまった
名前だけの思い出を
北の海に流そうとする
なつかしい海を見下ろす丘は
風車が影で風景を切りながら
まるで楽器のように
経文旗
(
タルチョ
)
のはためく音で
彼方から呼ぶのです
いろだけになってしまう
そうでしょうか
とうめいになってしまう
そうでしょうか
私という葡萄は
太陽に透かすと濁った赤じゃないですか
風に吹かれると青白く粉までふいて
つぶれたって、しみこんだって
そこに有ったという
匂いまで思い出させて
なのに
とうめいなたくさんの蛍が
言葉だけが詰まった
名前だけのあいつを
いろだけにかえて
どこにもない場所で
彼方から呼ぶのです
自由詩
砂丘で蛍を見たあいつ
Copyright
たりぽん(大理 奔)
2006-10-19 22:20:46
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