百合
e R i

いつもそう、決まってそれは冬だ。
今年も真っ黒な服を纏って冬に泣く。
明日は、カラスが、泣く。

いかないで。しなないで。なんでもいいから、いきていて。

とほうもないね、ノンシュガーの茶色。
百合がふわりと枯れた。
水気のない、布の下の肌。
触りたいのに、年老いた白さが、細い爪に引っかかった。

君に逢いたい、もう一度で良いから、夏と同じ君に逢いたい。

エスケイプした夏の小旅行、トリップ。
そこにあったはずの荷物が見当たらない。
覚えたはずの道のりが思い出せない。

レスポンス繋げた画面が消えた。

願い事を缶ビールで薄めた。
夜空にキレイにとける色をした、光になった。
輝きが命の重さだとしたら、それは、もう、

ねぇ、

問いかけた先の季節が留守番電話。
機械音、無機質な、女の声、響く、フローリングの大地。
逆戻りは出来なくなった、いつから。
不器用になった、CDコンポ。

いつだってそう、今年も冬だ。
誰かが泣いて、カラスが鳴いて、雪が軋んで。
黒い服を纏った、地下鉄の喧噪には、
悲しみなんかこれっぽっちもわけてあげないから。

百合がかさりと匂いを連れて、悲しい気持ちだけが、のこった。


自由詩 百合 Copyright e R i 2006-10-18 23:07:21
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