R4
小松 Anne

反対側のドアしか開かないんだ、と
キュートな顔をして言うものだから
わたしは安心しきって
そのちょっと不便な助手席に座る
もちろん、運転席側のドアから


ドアを開けると
異国のチューインガムの匂いがした


遠い街と
近くの駅
どちらがいいか、と問われたので
ラジオから流れる曲半分聴き終えるまで
丹念に考えあげた挙句

もっと車に乗っていたい
という理由で
遠くの街まで行くことにする

遠くの街には
遠足で行ったんだよ
と、ドライバーが言うから
でも今日はお弁当がないのね
と、わたしは答える

道路沿いには下品な色のネオンが並び
ドライバーは後ろから追ってくる現実を振りほどくには十分なスピードで
わたしを遠くの街まで連れて行く

お弁当には卵焼きが必需品だね
と、ドライバーが言い
それから唐揚げもね
と、わたしは答えた

匂いのせいか、わたしはすっかり
甘い気持ちになっている

遠くの街へは
次の角を曲がるらしい


自由詩 R4 Copyright 小松 Anne 2006-10-18 19:16:19
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