カステラ一皿平らげる
あおば

完爾として
泡沫候補が
手を振る
ドライバーが急ハンドルを切って
横町に突進していく
地方選挙の時代だと
大見得を切る
大ボス小ボスに
一泡吹かせてやりたいと
立候補した叔父さんは
思いの外の得票に
しばらくは
完爾としていたけれど
次点にも届かず
事務所のだるまも
涙目に見えたけど
所詮はこんなものと一同納得したのに
納得できない幹事さん
完爾として笑えない幹事さん
次は、
俺が立候補すると
密かに考えているのも知らないで
泡沫候補の叔父さんは
これからも力になって欲しいと
まじめな顔して頼んでる
叔父さん叔父さん何処行くの
あなたの居場所はもう無いの
着た切り雀の器量好しが
三行半を突きつけて
気の良い叔父さん
漂って
お江戸の真ん中
人切り庖丁突き刺した
カステラ一皿平らげる

お腹が空いては戦ができない
カステラもう一皿平らげて
お茶を飲んで
もう一度と
事務所のドアを開け放ち
裏切り河童を追い払う
そんな気力があったのと
驚く桃の木
柿の種
ビールのおつまみ
枝の豆
舌切り雀の
おじいさん





自由詩 カステラ一皿平らげる Copyright あおば 2006-10-14 20:02:54
notebook Home 戻る  過去 未来