影ふたつ。
夕凪ここあ

橙に染まる道
遠くに伸びる影連れて
陽の匂いの二人
また明日と
いつもの約束交わして

あの角を曲がれば
優しい明かりの灯る家
のはずなのに
空になった部屋、で
ひとり泣いた少女の夢儚く

また明日、と
曖昧なことば
それは遠くへ旅立つ日のこと
手紙を書いて
机の中で眠ったまま
涙で歪んだ不恰好な想いたちが
立ち止まったまま滲んでく

橙に染まる道で
足元で明日を指差す影
今日に結んでしまいたかった日
振り返らないまま
あの角を曲がれば
何もかもが思い出という文字に
すりかわってく

約束は悲しいほどの
優しい色に染まって見えない
いつかの手紙の一枚一枚は
懐かしい匂いに満たされて、
昨日に届くには遠すぎた

影ひとつ、


自由詩 影ふたつ。 Copyright 夕凪ここあ 2006-10-14 17:48:45
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