秋風
さいらと

白川通を自転車で下る
夕暮れが少し濁っているのは
街灯やら電飾やらがうるさいからだ
と、解釈する


岩倉の秋は早い
キンモクセイがもう落ち始めている
一週間前には満開だった


一ヶ月と少し前
リカーマウンテンで炭酸水を買って
宝ヶ池通で開栓すると
中身が吹き出してしまった、が
服はすぐ乾いた
夏だったから



そういえばいつのことだろう
私が大人であることを望み始めたのは





「やっぱり、年下と同い年はだめみたい」
そういった理由で
私たちは恋人から親友になった
残酷な午前八時だった





まだ薄明るい空に月は見えない
下弦の月は朝に見るのが美しいのだ


高校生であることがもどかしく
かといって大人の仲間にはなれない
ずっと、迷っていたけれど
後悔はしていない
ただひとつ、澱んだ贖罪の念


夏は過ぎて
秋が来た
それと同じに私は大きなものを無くしたのかもしれない
それが何か言葉にできないまま


白川通を自転車でゆっくりと下る
十六の夏がもう来ないことを、私は知っている

















自由詩 秋風 Copyright さいらと 2006-10-13 18:37:59
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