かたかたかたかた
松本 涼

 
かたかたかたかた
転寝の脇で何かが走っている

呪われてしまったように
僕の目はまるで開かない

僕は転寝ながら
その音を鳴らしているのが
やさしい生き物であったらいいのに
と願う


かたかたかたかた
音は遠ざからない

冷たい場所へと向かう
長い長い列車のようだ
沢山の兵隊の行進のようだ


耳元のその音に僕は怯える
やさしい生き物はきっと
どこかへ連れ去られてしまったに違いない


僕は開かない目の中で
必死に絵を描く

暖かい色は何色
柔らかい風景はどこ

かたかたかたかた
かたかたかたかた

かた


僕は上手く絵を描けない
耳の奥で僕はとっくに眠っている

かたかたかたかた
かたかたかたかた


音を鳴らしているのは僕だ

やさしい生き物はどこへ
連れて行かれたのだろう






自由詩 かたかたかたかた Copyright 松本 涼 2006-10-11 23:59:57
notebook Home 戻る  過去 未来