くずし飾り
ふもと 鈴

花畑泥棒ひそみて折りし茎緑かぐわし一日の終わり

街道に数まき散らす標識に道から道へと他人の静寂

渋谷にて白糸垂れる横断歩道踊る傘々武士おしのける

電灯にけぶる煙草に目を細めけむりを足して国作らむとす

池にたつ波紋を角と呼びておりふたりはしゃげる角獣の宵

満月に切り裂かれしは谷間雲ふとした後には離れし行間

目に入るほこりに涙しぼるより始発電車に馳せる昨日

八月の夕暮れ黄幕ひたすらにひとり送りしカーテンコール

台風とかけずり回る少女いて口にほてるは板チョコレート

幾何学のビルのヒミツがそらえくぼレクイエムよどすんと落ちよ



短歌 くずし飾り Copyright ふもと 鈴 2006-10-11 01:04:37
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