メモリーズ
キメラ




白びかり記憶の母胎に孵り
廃絶したお前の空が瞳を覗き込む

空襲に焼け落ちたような是空
一呼吸遅れた廃艦のパヴァーヌは
憂愁を吐き出し
幾つもの波風を舌に絡めた

凍りついたのは
純真を見返しては巡った岐路
乾ききった無防備な皐月は
優しく見知らぬ死の薫りを吹き込む


あの日
解らずにただ泣いていた
振り返らない白い少女の
ワンピースが深緑の幻光に消える

しめやかな囁き
大海に蒼衣と永遠を劃した
可憐爪弾く哀しすぎた埋葬よ
ああ
面影
照らせ
切なる融解を穢れた漣に散らし
赤い日輪の殺戮
崩れ去る瞬間の苛烈な獅子を殺せ

残響に燻られた善心
転生の兆しが六番目の指に繋いだ
柔らかき感触を諭した


メモリー
中空には失跡の影
今も尚
ひかり続けていたわたしの欠片






自由詩 メモリーズ Copyright キメラ 2006-10-10 19:38:17
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