ムーンライト
キメラ




あなたを想いだす
その限りない閉鎖の表情で
おおきく柔らかな時間の傍ら
水桶に冷えた胡瓜のように
あなたはそこに在った

変わり逝く影象に飛び込むシソフレ二―
いのりは膨大に伸縮された
澱む底辺から それは静かに
奏でられることのない不協和音の暗言で
あたたかな呼気にうらはらな唄を刻みつけ
舗道に蒼く結晶した零配管のエレメントが
あなたに星の涯をとどけた


わたしは知っている
あまりにも繊細なモノトーン
鳩時計が告げた独白の中心で
あなたは願った

それは重なり合う世界の外側から
たったいま わたしを突き貫け
幻廊ゆらぎ逝く 永き放物線のさざなみ
くぐり抜け辿りついた 淡い初夏の陽炎
スロウラインに哀しく明滅する夜光虫と
シルフィードの琥珀玉

夢のように消えてしまったわ


もうすこしあるこうか
あの湖畔のどこか あなたが
いつかみつけた永遠がまっている


水面に佇みあなたを想いだす
高架の林道からのライトが
そっと涙を照らし
あなたのような月が滲んだ






自由詩 ムーンライト Copyright キメラ 2006-10-08 19:11:28
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