風、とまどう鳥よりも
たりぽん(大理 奔)

緩やかな曲率で
道は行き止まりまで続いていた
そこより遠い場所を
知らなかったので
墓標はその岬に、と決めていた

漁火の整列する底には
冷たい海流があって
行き止まりの
もっと向こうへと
世界を届かせる

渡り遅れた白い鳥が
見知らぬ季節にとまどい
暗い波を瞳に映しながら
花!、砂に咲く花のように
とても小さくうなづく

  それはゆうべの腕の中で

雨の生まれる場所の
雪の生まれる場所の
それよりあやふやな場所で
生まれる風、不確かな

行き止まりを
知らない世界に住む
風になれば
たどり着けるだろうか

  透明な居場所を告げる
  波、砂、鐘の音
  流せ、流せ、流せ!

あなたを透明に変えた
あの時間よりも確かに
思い出をつなぎとめるためではなく
すべてをつなぎとめるために
私は言葉を生み出したけれど

  いつの間にか星闇が気配を包み
  大気圏の行き止まりで
  石ころが星に流れる
  とまどう鳥が
  不安な声を上げる

声は風にのまれ
すべてにとどき
誰にも届かない
すべてをつなぎとめるために
私は言葉を生み出したけれど



自由詩 風、とまどう鳥よりも Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-10-08 18:55:44
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