豊穣な三遊間
たもつ


サードとショートは楽しそうに話をしている
ああ、いいなあ、と思ってセンターを見る
そこには人数あわせの地蔵
ということはチェンジになるごとにあれをベンチまで運ばなければいけない
はるか彼方ライトを見れば
打倒サップ!の鉢巻をしてサンドバッグを叩いてやがる
今日は広い外野をひとり占めかよ
サードとショートの距離はさっきより縮まっていて
そのうち手でもつなぐんじゃないかと思っているうちにもう舌が入っている
主審のプレイボールの声があってもゲームは進行しない
マウンドにはピッチングマシーン
そうか、ピッチャーは嫁さんがお産だったなあ
頼みのセカンドは家と車のローンで首が回らない
ファースト、ああ駄目だ、トンボを見つけて嬉々としている
仕方なく走ってマシーンのスイッチを入れる
カキーンといい音が響いて打球は右中間に
白球を追って走る走る
花粉症だったことを思い出して
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになる
俺はこんなことをするために華の大都会にきたんじゃない
そう思いながら「コメオクレ」と田舎の母親に電報を打つ
もうあまりに卑猥すぎて三遊間の話はできない




自由詩 豊穣な三遊間 Copyright たもつ 2004-03-16 12:22:58
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