旅立ち
たもつ



駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った



自由詩 旅立ち Copyright たもつ 2006-10-07 21:47:58
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