いちばん 遠い夜
たりぽん(大理 奔)

月が消失点のようだ
描かれた風景は
オルゴール、オルゴォル
ピンの抜けたドラムの内側で
漏れる光を、星だと
僕たちはささやきあったね

モルモットの遊具のように
夜空をまわし
時計の針が進む方向に
歩いたり、走ったり
つまずいたりしながら
闇の深さを
ぬくもりで確かめて
幻聴の旋律を
ドラムの内側に突き立てる
流星雨に打たれて
加速度の方向に
流れていく、落ちていく
ほほを湿らせて
僕の肩を濡らすもの
それは闇に還しては
いけないもの
ぬくもりで確かめて

雲が天地を繋ぐために
ふりしぼる力をください
二人は行くのです
たどり着いたら消えてしまう
場所へ行くのです
漏れる光が奏でる
音楽までが、ため息に消える

さあ、月が消失点のようだ
世界に触れている
なのにたどり着けない
無限のドラムの
いつもいちばん遠くに置かれるのが
その場所に
ふさわしいと



自由詩 いちばん 遠い夜 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-10-05 21:43:23
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