ありったけの倫理を
ブルース瀬戸内

手を上げろ。さあ手を上げるんだ。
おとなしくこの袋にこの支店にある
ありったけの倫理を入れろ。一つ残らずだぞ。
おっとお姉さん、緊急ブザーを押しても無駄だ。
回線はすべて切断した。
防犯カメラには昨日の映像を流している。
抵抗は無駄だ。
おとなしく倫理を用意しろ。


手を上げろ。さあ手を上げ続けろ。
ここに莫大な倫理が預けられていることは
調べがついている。
誰も使い方が分からないから
ここに預けるわけだろ、こんなにもたくさん。
さあどんどん倫理を入れるんだ。
この袋が終わったら次の袋だ。
なんだ、大体虚しくないか、
皆で揃って倫理を預けるなんて。
使わないでどうする。
何十年預ける気なんだ。
なんなんだ、この国は。
預けていること自体知っているのか。
だがそんな心配も今日までだ。
私がすべて使わせてもらう。
倫理も本望だろう。


さあまだだ、まだ手を上げ続けろ。
シンボリックだな、すべてが。
よし、いいだろう。ぎっしりだ。
手数かけたな。
まだだ、手を上げ続けろ。
200数えたら降ろせ。
では、ごきげんよう。


自由詩 ありったけの倫理を Copyright ブルース瀬戸内 2006-10-05 08:14:56
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