「悪い夢」
服部 剛
昨日の仕事を終えた帰りのバスで
( 毎日々々同じことの繰り返しだなぁ・・・
と心に呟きながら疲れてうたた寝していた
今は亡き・好きな作家のE先生が
ぼんやり現れ
( 平凡なだからこそ
( 誰かへのささやかな愛情で
( さえない日常に花を飾るのさ
と語る声を耳元に残して消えた
家に帰り「 お帰りなさい 」と
食卓を囲む婆ちゃん・親父・母ちゃんと飯を食い
今日という日を洗い流すように歯を磨き
寝不足なので夜9時半に布団に入った
*
気がつくと免許の無い僕が何故か車のハンドルを握り
見知らぬ道で人を轢いて青ざめていた
道の背後でアスファルトにぺちゃんこになった
被害者の開いた口は呪詛を唄い続けるので
恐くなって夢中でアクセル踏み込み逃げてきた
*
目が覚めて
窓から朝の光は射して
小鳥は囀っていた
高鳴る胸に手をあてて
布団から身を起こす
( 夢でよかった・・・
階下から
母ちゃんの声が聞こえる朝6時半
「 起きなさ〜い、仕事遅れますよ〜 」
今日も
ふつうに朝食を食べ
ふつうに出勤し
気の合う誰かとふつうに遊ぶ
あぁ、平凡って、すばらしい。