がらくた箱
白雨


 さて君の心のうちは傷になるほどよくわかったが、
 それでも君は奪えまい
 その匂いと
 ふたつの瞳
 君のこしらえた憶い出は
 思い出すほど麗しい
 そして君にはおぞましい
 晩年の猫の瞳の陰険さ
 生活の影に隠れた暗号は
 君に漏れずにはしまわなかった
 それが僕にはありがたい
 屋根裏部屋のがらくた箱に
 君のふたつの瞳はしまってある
 おまけに ああ、晩年の猫の目もまた、
 忘れようにも忘れまい
 奪いようにも奪えまい
 、君。
 


自由詩 がらくた箱 Copyright 白雨 2006-10-01 21:42:21
notebook Home 戻る