ときどき僕は、まだ羊水の中で
ベンジャミン


ときどき僕は、まだ羊水の中で
少し離れた場所から聞こえる声に
そっと耳を澄ませている気がする

それはまるで子守り唄のようで
鼓膜を揺らすほどでもない
優しさを持っている


ときどき僕は、まだ羊水の中で
たとえば争いや憎しみも忘れて
平和の意味を考えることもなく

ただ自然に漂う
風や川や海の波のように
そして自分も
そんな自然の一部であることに
何の疑問もいだかないまま
穏やかに瞳を閉じている


ときどき僕は、まだ羊水の中で
生まれることを待ち望み
生まれることが生きることと等しいまま
恐れを知らずにいたことを
思い出すことがある


ときどき僕は、まだ羊水の中で


まるで眠っているような感覚の中で
確かに存在する自分自身を
少し離れた場所から感じるとき


ときどき僕は、まだ羊水の中で


何も知らないことに無邪気で
何も知らない世界が満ちるとき
ようやく聞こえる
この鼓動のような希望を


ときどき思い出すことができる







自由詩 ときどき僕は、まだ羊水の中で Copyright ベンジャミン 2006-10-01 05:02:11
notebook Home 戻る