ゆら
まきび

目が見えているとき人は
明かりを尊ぶ
暗がりを恐れ
不自然に遠ざける

生きているとき人は
生を尊ばない
死をも尊ばず
無為なときをすごすものもある

目が見えなくなったとき人は
暗がりと親しみ
明かりをも忘れないがしかし
見たくてしょうがないものが見えない

死のうとするとき人は
生を信じない
死をも信じず
疑いを持ったままあいまいに死のうとする

人一人の愛を失ったとき人は
愛を殺す
愛の感触をわすれ
どんどん臆病になってゆく

明日を見限った旅人たち
若しくは
明日に振り落とされた人たち

あなたたちはみじめではない

生がそのように
暗いだけでよいものか
死がそのように
明るいだけでよいものか

幾度となく問いかけてみるけれど
答えはないまま日は昇り暮れてゆく

ゆらゆらゆらゆら
先の見えぬ暗き空の中
細き糸にぶらさがるゴンドラが
風に煽られ雨に削られる

ゆらゆらゆらゆら
もう見えぬゴンドラの
通った後の塵くず
例えそうだったとしても

けして
あなたたちはみじめではない






2006・4・9
2:59



2006・10・1
4:22


自由詩 ゆら Copyright まきび 2006-10-01 04:53:05
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