草野大悟

目の前に
サムホールの油絵二点
右手が自由に動く時に
君が描いたものだ。

ひとつは
テーブルの上の4本の瓶

もうひとつは
テーブルの上の4個の洋梨

どちらも
ペインテイングナイフを使って
ある部分は大胆に
べつの部分は繊細に
描き込んである。

4という数は
ぼくら4人家族をイメージさせ
テーブルは
毎日の食卓を彩っていた
君のホームグランドだ。

サンドマチエールを使って
ざらりと仕上げたバックと
滑らかなテーブル内のコントラストに
泥沼のような世間から
家族を守り抜こうとしていた
君の矜持が見える。

そのタッチの
ひとつひとつが
愛おしい
ひとつひとつが
哀しい。


かじかんだ右手のm

折れ曲がった左手のm
また、油絵を描こうな
ふたりで描こうな
きっと
きっと
描こうな。


自由詩Copyright 草野大悟 2006-10-01 00:47:57
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