金魚の奇跡
愛心

私は水槽の中で目を覚ましました
生きている・・・
私は水の中でくるりと一回転しました
私の小指に
赤い婚約指輪はありませんでした

夢月はどこだろう?
ふと思いました
水槽の外を見ても夢月の姿が見えません

・・・・・ガサリ

木が軽く揺れました

「誰?!」
私が構えると
「俺だよ!お・れ」
聞きなれた声
まさか・・・・・・・
私が木の後ろを見ると
そこには真黒な金魚がいました

「やっぱり紅香は金魚だったのかぁ
 俺と同じだな」
そいつはにっこりしたまま言いました
「夢月!」
私は夢月に抱きつきました
「でも・・・・・・何で夢月が金魚?」
私が聞くと夢月はゆっくりと話し始めました

夢月は違う夜店の金魚で
王子様だったというのです
そしてこの家の奥さんに捕まったというのです
奥さんは夢月を大切に育ててくれたのですが
ある日家を出てから
帰って来なくなったというのです
夢月は帰って来るよう
何日も願い事をしていたのです
そしてある夜
夢月は人間に変わりました
でもその状態が何日も続くと
金魚に戻りたくなりました
運命の女性に会うと
金魚に戻れます
それが紅香だったのでした

紅香は聞き終わると
夢月にキスをしました
そして言った言葉
「よかったぁ
 これからも夢月と一緒にいられて」

二匹は自分の髪の毛で
指輪を作りました
そして交換しました

数ヵ月後後・・・
アパートの大家さんが
空き家なのに
人が住んでいるような部屋に行きました
古ぼけたOGAWAと書かれた表札
入ると埃だらけの部屋ばかり
寝室と思われる部屋にはオモチャの指輪
リビングには藻で緑色の水槽
大家さんは水槽に軽く触れました
中で何かが揺れます
水を捨て見ると
身体を寄せ合って
赤と黒の金魚が死んでいました

黒のひれには赤い糸のような物が
赤のひれには黒い糸のような物が
くくりつけてありました
大家さんはお墓を作ると二匹の金魚を埋めました
「この二匹の金魚は恋人同士だったんだろうな
 生まれ変わった時も恋人同士だといいな」

数年後
大家さんの所に若い夫婦がやって来ました
黒髪で黒い瞳のだんなさん
赤い髪で赤い瞳の奥さん
「小川夢月と言います
 こっちは妻の紅香です」

 

『生まれ変わったときも恋人同士だといいな』









自由詩 金魚の奇跡 Copyright 愛心 2006-09-28 21:42:49
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