羽抜け鶏
杉菜 晃

羽抜け鶏は
見かけほどにはこたへてをらず
日を直に浴びられるだけ
血潮に赫いて
田舎道を闊歩する


見よ
いつもは目を皿にして
獲物を追ふ狐が
鶏冠とさか王の惨たらしい外貌と
血気の勇ましさに
笹薮の奥へと後しざりする


鶏冠とさか王が笹薮に向き直り
時をつくるものなら
狐は

ぞぞぞぞーつと

笹の葉擦れも凄まじく
後方の丘へと一直線に遁走する
   
   パ
   サ
   パ
コケコッコーー
   サ
   パ
   サ
   パ
   サ
   パ

横長の文字は翼のつもりだが
左右不揃ひなのは
羽抜け鶏のことゆゑ致し方ない




自由詩 羽抜け鶏 Copyright 杉菜 晃 2006-09-25 11:27:12
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