海岸線
あおば



水鉄砲を空に放つ


リアス式海岸を
走る

気動車
機関車
各駅停車の
車両達
それぞれが
異なる
ジョイントの音を立てて
走る



水鉄砲を携えて
駄洒落の季節は
蒸し暑いので
避暑地に行くのだ

がっちりした体格の男が
席を立って
客車のデッキで立ち話

嬰児を抱いた夫婦の片割れが
空いた席を占拠する
自由席区間なので
誰が座ろうと
列車は文句を言わないで
ジョイントの音に乱れはない
乱れるのは
停車場に近づいて
ポイントを通過するときだ

腹が痛いと喚いていた
痩せた男は
途中下車して
何処かに消えた

乗降客に紛れて
カナブンが一匹
空いた席を占拠する
自由席区間だから
列車は文句を言わないが
後からやって来た
お客さん
忌々しそうにカナブンを
窓から思い切り投げつけた
カナブンは
大慌てで羽根を拡げたかどうか
羽音は聞こえなかったが
ジョイントの音は正確で揺るぎない
列車は文句を言わないで
次の停留場まで
エンジンを唸らせて
勾配を登ってゆく


自由詩 海岸線 Copyright あおば 2006-09-24 03:38:04
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