遠泳
砧 和日
いつのことか ハマヒルガオが 群生していた
ような気がして 彼が思わず 発語したのを
彼女の発語が 相殺したので はじめから何も
なかったのと 等しい時間が 末永く続いた
規則正しく 連なってくる 無数の波の
揺れ方が似ている あんなにたくさん 打ち寄せられた
貝の数が 増えていない はじめに彼女が
そのことに気付いて 少し遅れて 彼も気付いた
本当は ずっと前から 彼は彼女よりも
劣っている でも彼らはお互いを ちょうどに
打ち消しあうことに 力を尽くした
自由詩
遠泳
Copyright
砧 和日
2006-09-23 19:53:54