唄声  花の枝  岬
杉菜 晃

 唄声 


曙光が
窓ガラスを割つて
侵入した

籠の鳥が
砕け散つたガラスを
呑込む

ガラスは
小鳥の胃の中で
金平糖になつて溶けていき

それからといふもの

小鳥は
宝石をばらまいて
啼きつぱなし

唄声は甘く
虹色 
時に夕焼けの色
夜は
星のきらめき





 花の枝


夕景の中
もの思ひに沈んで
俯き歩いて来ると

花の枝が
通せん坊した

朝出掛けるときは
なかつた

―花の枝―

それが夕方
出現してゐる

天使の腕?





 岬


奇岩の鮫の牙が
見るからに鋭いので
恐れをなした波が
慌てて退いていく

次も
また次の波も
退いていく

たまに大きくぶつかつて
哀れ 気泡と化してゐる


自由詩 唄声  花の枝  岬 Copyright 杉菜 晃 2006-09-21 07:01:41
notebook Home 戻る