天王寺動物園に動物を見に行く
たりぽん(大理 奔)
君と
君の子供と
動物園へ遊びに行く
動物園のない町に住んでいるので
キリンもカバも見たことがないからと
地下鉄に乗っている間も
図鑑で予習に余念のない二人を
窓鏡に映る姿で見つめると
ランプに手をかざしたようにあたたかい
台風のおいていった小雨が
時々、三人を湿らせたけれど
黒雲の切れ目に青空が抜けて
明るく照らしていく先が
未来のように思えたから
ちっともさびしくはなかった
キリンや象に喜び
水中のカバの大きさに驚き
レッサーパンダに興奮し
オラウータンに笑い
蛇におびえる、君と君の子供
僕は微笑む
さあ
そして閉園の時間が来て
動物園のない町への
小さな旅路のはじまりで
窓鏡に不鮮明に映る自身
檻も堀もないのに野生でいられない
それが最後に観察した動物
そんな僕の両手を取り合い
無邪気な君と君の子供
いつしかランプのぬくもりが
この身を焼くだろう
野焼きに捨てられる
案山子のように焦がれて
それでも
それでも
それでも
それでも
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もう一つの週末