傘が要る
ささやま ひろ

母さんは言った

雨が降るかもしれないから
傘を持っていきなさいって

少しくらい濡れてもいいと思った

朝起きたら
神様に祈りなさいって

仕方がないから祈った

理不尽があっても
乱暴な言葉は使っちゃいけませんって

家と外とで使い分けた

食事の前には
神様に祈りなさいって

都合のいいことだけ祈った

歩く時は
背筋を伸ばしなさいって

斜に構えて歩いた

寝る前には
神様に祈りなさいって

この祈りはどこに届くんだ?


でも知ってる
ずっと後になってからのことだけど

僕たちのことを
愛してくれていたんだね

あなたは逝ってしまったから
伝えられるわけもないけれど


僕は神様に
祈りを捧げたりしない

けれど

感情の破片は
容赦なく降ってきて

僕は避ける術を知らない



僕には

傘が要る







自由詩 傘が要る Copyright ささやま ひろ 2006-09-19 01:42:52
notebook Home 戻る