秋は
まどろむ海月





その触感に硝子は濡れ
窓の向こうに季節の音が訪れた
川と海がきらめきの水に重なり
遠いそこにも
二人だけの神話は秘められている



 胸のなかの声 腕のなかの声
 指先の声 ゆらめく声
 笑い 泣き はばたいたね
 まわり まわり
 まわりながら 私の名を呼んだ
 あなたは

 らせんの中で結ばれた痛みは
 光となってつらぬいた



季節のざわめきが痛い
風のささやきが
小径をたどる歩みが 痛い
未来は不在のまま
過去と今が重なり
現し身のように抱きしめる
悲しみの愛しさ



映るもの よぎるもの
響くもの ながれるもの
揺らぎながら遠ざかる
空の灯し火

すべてが現前するかのように
秋は










自由詩 秋は Copyright まどろむ海月 2006-09-18 11:19:51
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悪意の夜