葡萄色の
Rin K
夕闇の
あの色が好きです
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色
甘いあまいのは
街の匂い
あなたとはぐれた
秋の匂い
五線紙どおりの
狂いなき旋律が
漏れ出づる角のはちみつ屋
あのこのバイエルはもう黄色
プラタナスもまた染まる
季節は一巡し
時計が一巡する
心もまたひとめぐり
あなたに戻ってきては
この日だけは
思い出すことに許しを請いながら
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色
夕闇の
あの色が好きです