背中の背中に潤う寝息
砂木
きりきりと張られた
暗い夜道
向かう音のない雨
片側だけで 聴く耳
もうひとつの行方
舗道を流れる
外灯の明りに
寄りすがり
つぶてに 落とされた 蛾
パタパタと 動かす羽
穏やかに照らされても
少しづつ
雨の川に なくす
紫に色づきはじめた すすき
うつむく 風
障子に 少し 朝
消えかけてる 体
隣りで寝ている夫が
ふと 起き上がる
背中越しに
ばさり と
布団がかけられた
自分も 布団をかぶって また眠る
遮断機がおりる
蛾の沈む雨が 過ぎていく
すすきが 穂をあげる
チクタクと時計の音
段々 まぶしい日差し
渇いた背中
潤したのは
変わらない あなた