近藤くんへの手紙 〜南仏にて〜
馬野ミキ

Res:ミキ 題名:南仏にて 投稿日 : 2004年3月7日<日>22時03分

近藤君、
僕は今南仏の田舎町にいる
鉄道も一時間に一本しか通らないくらいの、

ぶどう畑に囲まれた白壁の具合のいい家を見つけたんだよ
屋上からは地中海がみえる
ワインは飲み放題

そこで自分と村の人たちの為に絵を書いているよ
特別に美人というわけではないけれど
気立てのいいチャーミングな女の子三人と付き合っている
皆僕と僕の描くものをよく理解してくれる
三人共、同じようにちゃんと大切にしたいと思っているんだ。

屋上には白の洗濯物だけを干している
すべては南の風に吹かれ、やさしく揺れている
まるでいつ死が訪れても不思議ではないみたいに

庭でチューリップを育てているんだ
隣に住む婆さんから種をもらった
花というのはとても可愛いものだね近藤くん
毎日水をやっているんだ
それは俺が選んで決めた俺の仕事なんだ

近藤くん、疲れたらいつでも遊びにおいでね
一人でいたい時間もあるだろけれどね
せっつめないことさ
僕もこっちに来て詩なんか書くのはやめにしたよ
詩以外にもたくさん美しいものがこの世にはある
どこまでも広がる空と、海 連なり飛ぶうみねこ、この地方だけに生息する蝶、沖で衝突するタンカー
たくさんのものが見える
そして笑ってしまう
何しろワインが飲み放題!

僕もたまには日本語で誰かと喋りたくなる夜がある
久しぶりに手紙でも書こうかな
近藤くん、お元気ですか?


自由詩 近藤くんへの手紙 〜南仏にて〜 Copyright 馬野ミキ 2004-03-11 23:22:56
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