独りぽっちで咲く花あれども
きりえしふみ

見渡せば沢山の木々
沢山の丘を越えた その先の先
沢山の花が咲く 沢山の野辺がありました

昔はそこで わんわん子供らが
泣いて 笑って その傍らに
とりどりの花ゞが 楽しげに
風に歌って そよいでいました
くしゃみ顔のおじさんも よれよれのおばさんも
一癖あっても みんながみんな
それはそれは綺麗で 粋な花でした

もしも もしも わたしが花の種ならば
彼等を焦がれて 芽を出しました
日が隠れても尚 日向の方へと
泣きながら がむしゃらに
根を張りました 伸びて行きました

けれどもわたしが ほんの小さな芽を出したとき
焦がれた花ゞ、皆 うなだれて
綺麗な衣装は 大地がごっそり
しまい込んだ後でした

わたしは切ない気になりました
(だって そうです わたしは故郷を無くしてしまったのです!)

けれども地下より 仲間は言います

 「独りぽっちで 咲いてごらん 怖がらずに
 君が咲いたら 誰かがつられて
 君に似た 君とはまた違う
 華やかな衣を 広げるだろう
 一人から二人へ 二人から四人へ
 そうして 咲く花の
 その血筋、絶える事なく
 野辺を粧い 丘を登って
 大きなあの 椎の足元、樫の爪先
 美しく飾り 何処までも花の香(か)は
 薫っていくだろう」

©shifumi_kirye 2006/09/15


自由詩 独りぽっちで咲く花あれども Copyright きりえしふみ 2006-09-15 13:49:59
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