かるめやき
美味

放課後
勇気を出してあの子を祭りに誘った

こっちの気も知らないで
僕を射抜いた満面の笑顔で
また、追い討ちをかけられる
くそっ、かわいいな
いっその事、断ってくれれば
今年も友達と馬鹿やって遊んだのに
ほんと、嬉しくてしょうがなかった

いつもは寂れている商店街の長い通りも
秋の夕刻の空を彩る提灯で
華やかに活気付く
神社を囲うように所狭しと屋台が軒を連ね
虫の音も人々のざわつきに身を潜めた

大きな鳥居の前で
あの子を待つ間
近くの屋台で一つ
軽目焼きを買った
雲のように軽くて
軽石のように穴ぼこだらけの硬い飴菓子

がりがりと歯で削るようにして食べる
ただ甘いだけの軽目焼き
まるで、自分のようだなんて
どの口からそんな言葉が出たのか
がちがちに緊張してるのは本当だけど
頭はスカスカじゃないぞ

鳥居みたいな真赤な浴衣を着て
満面の笑みで手を振る
あの子の姿を見つけた瞬間に
必死で考えていたデートプランが
一瞬のうちにして
雲のように消えていってしまうまでは







自由詩 かるめやき Copyright 美味 2006-09-14 14:02:28
notebook Home 戻る