潜望鏡
霜天

ただいま
と、呼べる場所をいつもこの手の中に持っている
気付かないほどに当たり前の鼓動の中にいる
夜更けへ向けて風速は加速し続けている


明日を見渡したいから、と
君は潜望鏡を買ってきた
早速屋根に取り付けて
日々、覗き込んでいる
何が見える、と聞いても
何も答えないの、は


夜更けへ向けて風速は加速し続けている
向かい風の中にいる
気付かないほどに当たり前の鼓動の中にいて
触れる順番を、間違えてしまう


同じ場所で言葉を詰まらせてしまう
夢は、覚めても
どこからがここ、なのかが分からなくなる
両手を広げて、部屋の端と端を繋ぐ
君は隣で間違えたままのパズルを
そのまま組み立てようとしている
二人は確かに零れていくけれど
受け止めてくれる手を、知らない
誰も



向かい風の中にいる
向かい風の中にいる
いつも気付けない、鼓動の中にいる



これで明日がよく見えるから、と
潜望鏡は少しだけ、長くなる
おかえり
と、呼べる場所を確かに
確かにこの手に持っている


自由詩 潜望鏡 Copyright 霜天 2006-09-13 01:01:22
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