棄却検定
あおば

もがく 
もがく

藻のないところで藻掻く
あたまの中に塩水が入って
考えることが辛くなり
すべては
旧態依然としたまま
塩漬けになり
保存されている

白く乾いた塩田を眺めて
山椒大夫は
憮然としてくしゃみをする
海が
塩が
眩しいから
目を細めて遠くの舟を追いかける
舟の中の
藻掻き方も知らないで
婉然と微笑んでいる妻の顔を見ているのか

雨が降る日も
舟に乗って
外に出なければならない
百人一首のような
客人を迎えに
モノレールの駅に向かうと
銀色のワンピースを身にまとった
二人の宇宙人が
婉然と微笑んでいる

髪を染めた
母親似の娘と
その朋友であった

偽色の髪をなびかせて
新型のモノレールが立ち去ると
橋脚が次々と倒れ
黄色い太陽が
青い空に輝いて
婉然と微笑むように輝いて
夕方を迎えに行く
銀色の雲が
真っ赤に染まるのは
その少し後のことで
二人の宇宙人が
娘たちに戻り
聞き分けのない音楽を歌い
聞き取れない言葉でメールを打って
いつまでも続く坂道を苦にすることもなく
すらりとした脚を見せつけて
登り続けていく
後に続くのは
銀色の宇宙が
真っ黒に変身した
星混じりの空だけであり
いくつもの
歌の無い足跡は
棄却されたように消えて
目に見えない
顔のない街に
歌声だけが
何処からか聞こえてくるが、ケータイの着信音かもしれない




未詩・独白 棄却検定 Copyright あおば 2006-09-10 17:50:50
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