She's me nigh
オオカミ

深く息をすると背骨が軋んだ
にぶい はれつおんと
ちいさくなってゆく きみの よどみに
胎動



おかあさんは、
酸化してゆく真っ白なおでこに
くちづけ したでしょうか
ねぇ



指は、生えていましたので
私はそれらを動かしました
踵は、土を踏んでいましたので
私はそれらを愛しました
瞳は、よく出来ていましたので
私はそれらを育みました
唇は、通気が大変よろしかったので
私はそれを 繋いだのです


うちなるしるべに手を伸ばす
見れば、明け方のさざ波のうえにたつ
ちいさな小船のようだった


しゃりん 、というなにかの音に耳をすませば
おわっていく鼓動がきこえた


深く 息をすると
なみだが


はあ
ああああああ
・・・




軋む背骨の音を
わたしはまたちゅうい深くきいた
ちいさなよどみを どうして憎むことができたでしょうか


おかあさん
疎ましさは愛しさなの
アイ、してるとか アイ、してない とか 変じゃない



水平線のうえ
わたしは不覚にも しずんでゆくことができない
できなかった

まだ、こんなに軽いからだでは
まだ、だめよ、と
私によく似た顔でおかあさんはいった

間接はぎしぎしでぜんぜん動かない
ぱき、ぱき、と擦れる度に
わたしは少し痛いおもいをしたけれど
まだ、だめよ、と言われてしまったので
はあ ああああああ
と深く息を


うちなるしるべに繋がれた、しがらみ
あの胎動はあなたで
あの よどみは
・・・




まったく軽い体だ
ぎしぎしとうるさいけれど
それはただ、それだけのこと
軋めば軋むだけ 軽いことを知ってしまう






顔を洗いなさい と
おかあさんはいって、それきり戻らなかった

それとも
海水が眼に沁みて
みえなかったのかもしれない




自由詩 She's me nigh Copyright オオカミ 2006-09-10 02:38:31
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