♪ ♪ カタツムリ ♪ ♪
杉菜 晃
カタツムリは
どうしてあんなに大きなラツパを
引き摺つて歩くやうになつたのだらう
身に余るラツパの大きさに
閉口してゐるのはよく見かけるが
いまだそのラツパが吹き鳴らされたのを
聞いた覚えが無い
一体いつそれは鳴らされるのだらう
カタツムリのラツパが
路地や街角や公園や庭の至る所で
吹き鳴らされるときは
恐らく世に大きな異変が起るだらう
その危急の時のために
いまだ一度として
鳴らしたことのないラツパを
彼等 カタツムリ族は
肌身離さず難儀をしつつ
引き摺り歩いてゐる
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
そのカタツムリ族に告ぐ
つひに危急の時が来た
高らかにラッパを吹き鳴らせ
我ら堕落した人間どものために
終末を告げるラツパを吹き鳴らせ
鼓膜をぶち破るばかりに
容赦なくラツパを吹き鳴らせ